パワハラ防止法施行を前に、パワハラ関連の事案が相次いで報告されています。~パワハラが起こらない職場とするためにすべきこと~

パワハラ防止法が施行される2022年4月を前にして、パワハラ事案が相次いで報道されています。

有給休暇の取得を願い出た部下に、「休むなら、辞表を持ってこい」と言って休みを取りづらくさせるパワーハラスメントをしたとして、神戸市内の警察署の警務課長が懲戒処分を下された事案

第三者委員会の調査で、2015年度から2020年度にかけて、教員による学生への「パワハラ」が疑われる事案71件のうち、のべ35件が「パワハラ」と認定された、北海道立江差高等看護学院の事案。最近の報道では、このパワハラがらみで生徒が自殺したとの疑惑も浮上しています。

部下3人に「超勤(時間外勤務手当)をもらっているのにこの仕事ぶりなのか」などの威圧的な発言や、感情的な叱責(しっせき)などをしたとして、京都市の課長級の職員が懲戒処分を下された事案

パワハラ

ここに取り上げた事案は、奇しくもすべて公務員によるものですが、公務員に限らず、民間企業においてもパワハラ防止対策に頭を悩ませている会社も多いのではないでしょうか。

2022年4月から施行されるパワハラ防止法において、事業主は、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」とされています。

具体的には、パワハラ防止指針に沿って、

1.方針を示す
2.相談体制を整える
3.事後対応を迅速・適切に
4.そのほか 

と大きく4つの面で対応することが求められます。

1.方針を示すとして
・方針の明確化、周知
・厳正対処方針の規定・周知
が必要になります。
具体的には、会社として、パワハラが厳禁であるとの方針を、就業規則や服務規律に記載し、その方針を従業員に徹底させます。同時に、パワハラの加害者には、厳罰をもって臨むなどといったことも規定する必要があります。

2.相談体制を整えるとして
・相談窓口の設置・周知
・窓口での適切な対応
が必要となります。
具体的には、相談対応者を決め、その相談担当者が相談窓口となる体制を整えます。また、相談対応者が、適切に対応できるよう、研修を受けさせる等も必要となります。

3.事後対応を迅速・適切にとして
・事実確認
・被害者への配慮措置
・行為者への措置
・再発防止措置など
が必要となります。
具体的には、被害者に配慮しながら事実確認を行う体制を構築します。また、具体的な再発防止策を策定する必要があります。

4.そのほかとして
・プライバシー保護措置と周知
・不利益取扱禁止と周知など
が必要となります。
具体的には、相談者・行為者のプライバシー保護のため、相談担当社に研修を受けさせる、相談者が相談したことによって不利益を被ることがないとの規定を定める等が必要となります。

これら対応は、法律に規定されたことですので、どこの会社でもこれら措置を実行に移すことが求められますが、一番重要なのは、パワハラを起こさせないことです。

パワハラには定義があります。

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この定義に該当すれば、部下からの行為でもパワハラと認定されます。例えば、年上の部下がこれまでの経験を背景に、新しく配属された年下の部下の指示に従わず、暴言を吐くなどの行為です。

また、パワハラにはいわゆる6類型というものがあります。

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これらを参考に、どのような行為がパワハラに該当するのかを理解することがまず必要になりますが、真に重要なのは、上司のマネジメント力向上です。

部下から上司への行為もパワハラになり得ますが、業務命令権を有している上司から部下のものが、パワハラの多くを占めます。そのため、上司のマネジメント力向上に真っ先に取り組む必要があります。

「厳しく指導して成績をあげなければならない。まだ足りないな」「最近の新人は、ちょっと厳しく指導しただけですぐに辞める。弱すぎる」などの意識を持つ上司は、無自覚にパワハラを行っている可能性があります。

また、優秀で仕事ができる上司は、頑張り屋で往々にしてプレッシャーに強いです。このような上司は、部下に自分と同等水準のパフォーマンスを求める傾向があります。

このような上司のもとでは、部下が常に緊張し、上司のちょっとしたもの言いでも、部下はパワハラと捉えがちとなります。

上司が部下からパワハラと訴えられる前に、上司が自分のマネジメントスタイルに気づけるよう、研修などを受講させることが求められます。

ただし、あまり上司側へ焦点を当てすぎると、上司が部下からパワハラと言われるのを恐れ、必要な指導をしなくなる。部下が増長し、なんでもかんでもパワハラと言い募るという状況に陥るリスクがあります。

そのため、部下は業務命令に従って業務を遂行する義務があることを研修等で理解させることも必要です。

4月のパワハラ防止措置法の施行を契機に、マスコミがパワハラ行為に関する報道を強化することが想定されます。そのようなタイミングで社内でパワハラが発生し、そのことがマスコミに報道されると、会社の評判はガタ落ちになってしまいます。

一度落ちた評判を回復するのは容易ではなく、多く場合、長い年月を要します。そのよう事態に陥らないよう、パワハラ発生防止に向け、一度社内を点検してみてはいかがでしょうか。

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